症状
のどの違和感・つまり感
【のどの違和感・つまり感を起こす病気とその鑑別】
のどの「違和感」や「つかえ感」は、咽頭・喉頭・食道・甲状腺などの器質的疾患のほか、自律神経・ストレス・逆流性疾患など機能的な要因でも生じます。
多くは良性ですが、腫瘍や甲状腺疾患などの重篤な病気の初期症状である場合もあり、適切な検査が重要です。
1. 咽喉頭異常感症(咽喉頭神経症)
明らかな器質的異常がなく、ストレスや自律神経の乱れによって咽頭の筋緊張が高まり、違和感を感じる状態です。
中年以降の女性に多く、咽喉頭の「何かがつかえる」「ひっかかる」感じが特徴です。
検査:喉頭内視鏡、甲状腺・頸部エコー、上部消化管内視鏡。
2. 逆流性食道炎(GERD)・咽喉頭逆流症(LPR)
胃酸が食道や咽頭へ逆流することで、のどの違和感・咳・声のかすれ・胸やけを引き起こします。
肥満・加齢・姿勢習慣が関係し、男女とも中高年に多いです。
検査:上部消化管内視鏡、pHモニタリング、喉頭内視鏡。
3. 慢性咽喉頭炎(後鼻漏を含む)
ウイルス・アレルギー・鼻副鼻腔炎・喫煙などにより、のどの粘膜が慢性的に刺激されることで生じる炎症です。
後鼻漏(鼻水がのどへ落ちる感覚)や異物感・咳払いを伴います。
検査:喉頭内視鏡、鼻咽腔ファイバー、アレルギー検査。
4. 甲状腺腫瘍・甲状腺腫大
甲状腺の腫れや結節が気道・食道を圧迫することで、のどのつまり感が出現します。
女性に多く、良性結節が多いものの、まれに悪性腫瘍(甲状腺がん)のこともあります。
検査:頸部エコー、甲状腺ホルモン(TSH、FT4)、穿刺吸引細胞診。
5. 咽頭・喉頭がん
のどの違和感・つかえ感が長く続く場合に重要な鑑別疾患です。
喫煙歴・飲酒歴のある中高年男性に多く、嗄声(声のかすれ)、痛み、血痰、体重減少を伴うことがあります。
検査:喉頭内視鏡、CT/MRI、病理組織検査。
6. 扁桃炎・慢性扁桃炎
急性炎症ではのどの痛み・発熱・嚥下困難を伴い、慢性化すると違和感や咽頭圧迫感が持続します。
若年〜中年層に多く、再発を繰り返す場合は扁桃摘出を検討することもあります。
検査:喉頭内視鏡、血液検査(炎症反応)、咽頭培養。
7. 食道アカラシア・食道狭窄
食道下部の弛緩障害により、飲み込み時のつまり感や胸部圧迫感を感じます。
20〜50代に多く、男女差はありません。進行すると体重減少・逆流症状が現れます。
検査:上部消化管内視鏡、食道造影、食道内圧検査。
8. 頸椎症(頸椎前弯の消失)
姿勢や加齢により頸椎が変形し、のどの周囲組織を圧迫して違和感を感じることがあります。
デスクワークや猫背姿勢の中年層に多く、肩こり・後頭部痛を伴うこともあります。
検査:頸椎X線、MRI。
9. アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎
鼻汁がのどへ流れ込む(後鼻漏)ことにより、のどの違和感や咳払いを引き起こします。
季節性・通年性アレルギーいずれでもみられ、鼻閉やくしゃみを伴います。
検査:鼻咽腔内視鏡、アレルギー検査(IgE、RAST)。
10. 心因性・自律神経性のどの違和感
器質的異常がなく、不安・緊張・ストレスなどにより自律神経のバランスが崩れた状態です。
咽喉頭異常感症と重複することも多く、症状は軽度ながら持続します。
検査:除外診断。必要に応じて内視鏡・心理評価。
■ 診断に必要な主な検査
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| 喉頭内視鏡検査 | 咽頭・喉頭・声帯の腫瘍や炎症を直接観察 |
| 上部消化管内視鏡(胃カメラ) | 逆流性食道炎・食道狭窄・腫瘍性病変の確認 |
| 頸部超音波検査 | 甲状腺・リンパ節・頸部腫瘤の評価 |
| 造影CT・MRI | 咽頭・喉頭腫瘍や頸椎異常の精密評価 |
| 血液検査 | 甲状腺ホルモン・炎症・腫瘍マーカーなど |
| アレルギー検査 | アレルギー性鼻炎や後鼻漏の評価 |
| 心理・自律神経評価 | ストレスや精神的要因の関与を確認 |
■ まとめ
のどの違和感・つまり感は、軽症の炎症やストレスによるものから、腫瘍性疾患まで多岐にわたります。
特に、症状が2週間以上続く・嚥下時の痛みや体重減少、声のかすれを伴う場合は、速やかな精査が必要です。
当院では、喉頭内視鏡・胃カメラ・頸部エコーを用いた精密な診断と、ストレスや自律神経の関与も考慮した総合的な診療を行っています。
のどの違和感が続く場合は、早めの受診をおすすめします。