小腸・大腸・肛門
潰瘍性大腸炎(UC)
1. 疾患の概要
潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis)は、大腸の粘膜に慢性的な炎症やびらん・潰瘍を引き起こす炎症性腸疾患(IBD)のひとつです。直腸から始まり、結腸全体に炎症が広がることもあります。特徴的なのは、病変が連続的に存在することと、炎症が粘膜層に限局している点です。
原因はまだ完全には解明されていませんが、免疫異常、遺伝的要因、腸内環境、ストレス、食生活などが関係していると考えられています。細菌やウイルスなど外的な刺激に対して、体の免疫が過剰に反応してしまうことで、腸の粘膜に炎症が生じるという説が有力です。
日本における潰瘍性大腸炎の患者数は年々増加傾向にあり、特に20〜40代の若年成人に多くみられますが、高齢発症例も珍しくありません。男女差はほとんどなく、誰にでも発症しうる疾患です。
2. 主な症状
潰瘍性大腸炎の代表的な症状は以下の通りです。
-
血便(鮮やかな赤い血が混じる便)
-
下痢(1日に数回〜10回以上)
-
腹痛(主に下腹部)
-
発熱
-
体重減少
-
全身の倦怠感
病変が直腸のみに限局している場合には、軽度の症状のみで済むこともありますが、広範囲に炎症が及ぶと症状も重くなる傾向があります。慢性的に症状が続く場合もあれば、突然悪化する「再燃」と症状が落ち着く「寛解」を繰り返すのが特徴です。
症状が過敏性腸症候群や感染性腸炎と類似する場合もあり、正確な診断が必要です。
3. 診断に必要な検査
潰瘍性大腸炎の診断は、以下のような検査を総合的に行って確定します。
-
血液検査:炎症の有無(CRPや白血球数)、貧血や栄養状態をチェック。
-
便検査:細菌やウイルスなど感染性の原因を除外。
-
内視鏡検査(大腸カメラ):粘膜のびらん・潰瘍を直接観察し、生検により組織診断を行います。
-
画像検査(CT、MRI):炎症の広がり、合併症(穿孔、膿瘍、巨大結腸症など)の有無を確認。
初診ではまず問診と血液検査を行い、必要に応じて内視鏡検査を実施し、最終的に診断が確定されます。
4. 主な治療方法
潰瘍性大腸炎は根治が難しい慢性疾患ですが、適切な治療によって症状をコントロールし、寛解を維持することが可能です。
薬物療法:
-
5-ASA製剤(メサラジンなど):炎症を抑える基本治療薬。寛解導入と維持に使用。
-
ステロイド(プレドニゾロンなど):中等症〜重症の再燃時に使用。長期使用には注意が必要。
-
免疫調節薬(アザチオプリンなど):ステロイド依存性や再燃予防に有効。
-
生物学的製剤(抗TNFα抗体など):難治性・重症例に対して有効で、近年多く用いられています。
生活習慣の改善:
-
バランスの取れた食事
-
規則正しい生活
-
ストレス管理
手術療法:
薬物療法で十分な効果が得られない場合や、大量出血、穿孔、中毒性巨大結腸症などの合併症を伴う場合には、大腸の全摘出術などの手術が必要になることもあります。
当院では、内視鏡検査を通じた早期発見・診断を行い、患者様の状態に応じた個別の治療方針をご提案しております。
5. 予防や生活上の注意点
潰瘍性大腸炎を完全に予防する方法はありませんが、再燃を防ぎ、寛解を維持するための生活習慣は以下の通りです。
-
刺激の強い食べ物や脂っこい料理を避ける
-
アルコール・カフェインの摂取制限
-
禁煙(喫煙が再燃を助長する可能性があります)
-
定期的な受診と内視鏡検査
-
ストレス管理と十分な休養
症状が落ち着いていても、定期的な診察と検査で病勢を把握し続けることが大切です。再燃を早期に察知し、迅速に対応することで重症化を防ぐことができます。
潰瘍性大腸炎は、正しい診断と継続的な治療により、日常生活を支障なく送ることが可能な疾患です。当院では、患者様の不安に寄り添いながら、安心して治療を受けていただける環境づくりに努めています。気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。