胃・十二指腸

胃けいれん

1. 疾患の概要

胃けいれんとは、胃の筋肉が一時的に過剰に収縮し、強い痛みや不快感を伴う状態を指します。医学的には「胃痙攣(いけいれん)」とも呼ばれ、明確な器質的疾患がないにもかかわらず、胃の運動や収縮に異常が生じることが特徴です。

一時的な現象として自然に治まることもありますが、背後に胃炎、消化性潰瘍、胆石、膵疾患などの器質的病変が潜んでいる可能性もあり、繰り返すようであれば精密検査が必要です。

胃けいれんは症候名であり、単独の疾患というよりも他の胃腸疾患の一部として出現することが多いのが実際です。


発症の原因

胃けいれんは、多くの場合以下のような要因が関係しています:

  • ストレスや精神的緊張

  • 暴飲暴食や冷たい飲食物の過剰摂取

  • 喫煙・カフェイン・アルコールの過剰摂取

  • 不規則な生活や睡眠不足

  • 胃炎・消化性潰瘍・胆石・膵炎などの他疾患

また、神経性胃炎や機能性ディスペプシアといった、構造的異常のない胃腸障害に伴って現れることもあります。とくに、自律神経の乱れが胃の運動に影響を与えるとされており、現代社会においては珍しくない症状です。


発症の傾向

年齢や性別を問わず発症する可能性がありますが、20~50代のストレスが多い働き盛りの世代や、更年期の女性に比較的多くみられる傾向があります。生活習慣の乱れや精神的負荷がかかる状況下では、より発症しやすくなると考えられます。


2. 主な症状

胃けいれんの主な症状は以下のとおりです:

  • みぞおちや上腹部の差し込むような痛み

  • きゅっと締めつけられるような痙攣性の痛み

  • 一時的な吐き気やげっぷ

  • ストレス時や食後に悪化しやすい

  • 発作的に起こり、数分~数時間で自然に治まることが多い

なお、症状の程度や出現頻度は個人差が大きく、持続的な痛みや出血、嘔吐などを伴う場合は、他の重篤な疾患との鑑別が必要です。

胃潰瘍や心筋梗塞などの病気でも類似の症状が現れることがあるため、初期段階では安易に「胃けいれん」と自己判断せず、専門医による評価が推奨されます。


3. 診断に必要な検査

「胃けいれん」は症状名のため、診断にはまず他の病気の可能性を除外する必要があります。以下の検査が一般的です:

  • 問診と身体診察

     生活習慣、食事内容、ストレス状況などを詳細に伺い、症状の性質を評価します。

  • 血液検査

     感染や炎症、貧血の有無、肝機能や膵臓酵素の異常を調べます。

  • 上部消化管内視鏡(胃カメラ)

     胃炎、胃潰瘍、胃がんなどの器質的疾患を直接観察できる最も重要な検査です。

  • 腹部超音波検査

     胆石や膵臓疾患の有無を確認します。

  • 腹部CT検査(必要に応じて)

     消化管以外の臓器も含めた精密な評価が可能です。

診断は「異常がない」ことを確認したうえで、機能性の胃けいれんであると判断されます。


4. 主な治療方法

胃けいれんの治療は、原因に応じた対症療法と生活指導が中心となります。

  • 鎮痙薬(けいれんを抑える薬)

     ブチルスコポラミンなどの抗コリン薬を使用し、胃の過剰な収縮を和らげます。

  • 胃酸分泌抑制薬(H2ブロッカー、PPI)

     胃酸過多が関与している場合に使用されます。

  • 消化管運動改善薬

     胃の蠕動を調整することで、機能を正常化します。

  • 抗不安薬や漢方薬

     ストレス性の要因が強い場合、自律神経を整える治療が行われることもあります。

  • 生活指導・栄養指導

     暴飲暴食の回避、カフェインやアルコールの制限、ストレス管理など、患者さま個々の生活に合わせたアドバイスを行います。

当院では、内視鏡検査を含む精密な診断に加え、薬物治療、生活改善、漢方処方など、症状に応じたオーダーメイドの治療を提供しております。


5. 予防や生活上の注意点

胃けいれんの予防と再発防止には、日常生活での心がけが非常に重要です:

  • 1日3食、規則正しい食生活を心がける

  • 暴飲暴食を避け、腹八分目を意識する

  • 刺激物(辛い物、冷たい物、カフェイン)を控える

  • 睡眠をしっかりとり、ストレスをためない

  • リラックス法(深呼吸・散歩・趣味)を取り入れる

  • 禁煙・節酒を心がける

また、再発を繰り返す場合は、心療内科的背景や機能性消化管障害(FD)も視野に入れて包括的な対応を行うことが望まれます。


最後に

胃けいれんは、つらい症状でありながら、適切な治療と生活管理で十分に改善が期待できる疾患です。

泉胃腸科外科医院では、専門医による的確な診断と、一人ひとりのライフスタイルに合わせた治療計画をご提案しております。

「最近胃がよく痛む」「胃がつるように痛むことがある」など、お悩みの方は、ぜひお気軽に当院までご相談ください。