胃・十二指腸
急性胃炎
1. 疾患の概要
急性胃炎とは、胃の粘膜に急激な炎症が生じる疾患で、比較的短期間のうちに症状が現れるのが特徴です。胃の粘膜が炎症を起こすことで、痛みや不快感、吐き気などのさまざまな消化器症状が出現します。
原因はさまざまで、暴飲暴食やアルコールの過剰摂取、強いストレス、薬剤の影響(特に非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉やアスピリン)が多く、細菌やウイルス、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染、さらには刺激の強い食品の摂取なども発症の引き金になります。
日本では、風邪などの体調不良時に起こる「胃の不調」として見過ごされることもありますが、急性胃炎は年齢や性別を問わず誰にでも起こりうる病気であり、20代〜50代の働き盛りの世代に多く見られる傾向があります。
2. 主な症状
急性胃炎の代表的な症状は以下の通りです。
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みぞおちの痛み(心窩部痛)
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胃もたれ・膨満感
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吐き気や嘔吐
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食欲不振
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胸やけ
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黒色便(出血がある場合)
症状の強さは原因や炎症の程度によって異なり、軽い胃の不快感のみの場合から、嘔吐や出血を伴う重症例までさまざまです。特に出血性胃炎の場合は、吐血や黒色便がみられ、早急な対応が必要となります。
また、症状は胃潰瘍や十二指腸潰瘍、心疾患(狭心症や心筋梗塞)などと類似する場合があるため、症状が激しい、または繰り返す場合は医療機関での診断が重要です。
3. 診断に必要な検査
急性胃炎の診断には、まず問診と身体診察が行われ、必要に応じて以下の検査が実施されます。
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上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
胃の粘膜にびらん(浅い傷)や出血がないかを直接確認します。急性期の炎症や充血の程度を観察し、潰瘍や悪性疾患との鑑別を行います。
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血液検査
炎症の有無や貧血、感染の兆候を確認します。出血が疑われる場合は、ヘモグロビンや赤血球数も評価します。
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腹部エコーやCT検査(必要時)
胃の外の臓器の状態を確認し、胆のう炎や膵炎など他の疾患との鑑別に用いることもあります。
診断の流れとしては、まず症状と既往歴をもとに内視鏡の適応を判断し、必要な検査を段階的に実施します。
4. 主な治療方法
急性胃炎の治療は、原因の除去と胃粘膜の保護を基本とし、次のような方法が用いられます。
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薬物療法
・胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬〈PPI〉、H2ブロッカー)
・胃粘膜保護薬(レバミピド、スクラルファートなど)
・制吐薬や鎮痙薬(吐き気や痛みが強い場合)
・消化酵素薬(食欲不振時)
原因薬剤がある場合は、中止または変更が検討されます。
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食事療法
胃にやさしい食事(刺激物を避け、消化の良いものを少量ずつ摂取)を心がけ、一時的に絶食が必要になることもあります。
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点滴療法
嘔吐や脱水がある場合には、点滴による水分・電解質補給が必要になります。
当院では、胃カメラによる正確な診断と、症状や背景に合わせた薬の処方や食事指導、生活アドバイスを行っております。重症例については、必要に応じて専門病院と連携をとった治療もご提案いたします。
5. 予防や生活上の注意点
急性胃炎は日常生活の中で誰にでも起こり得る病気ですが、次のような予防法や注意点を意識することで再発を防ぐことが可能です。
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暴飲暴食を避ける
胃に過度な負担をかける食事を控え、腹八分目を心がけましょう。
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アルコールや刺激物の摂取制限
辛いもの、カフェイン、アルコールは胃を刺激するため、控えめにしましょう。
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ストレス管理
ストレスは胃酸の分泌を促進し、胃粘膜に悪影響を与えることがあります。適度な運動や休息を取り入れましょう。
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薬剤の服用に注意
NSAIDsやアスピリンなどを継続的に使用している場合は、必ず医師の指導を受け、胃薬との併用を検討してください。
急性胃炎は適切に治療を行えば多くの場合は数日〜1週間で改善しますが、放置すると慢性化するリスクもあります。胃の不調や痛み、吐き気などの症状がある際は、無理をせず、早めの受診をおすすめします。
当院では、丁寧な診察と検査を通じて、原因に合わせた最適な治療をご提供しております。胃の不調を感じた際は、ぜひお気軽にご相談ください。